喫茶店のアイスティー

外で飲む紅茶や紅茶飲料がまずいという話ばかりを書いてきた。 そういう話ばかりだと、気が滅入るばかりなので、 思ったより良かったという話もしてみたい。

ドトール・コヒーというコーヒー・チェーン店がある。 そのドトールのアイスティーが意外にいける。 ちょっと渋い感じのセイロンティーだが、 ちゃんと味がするので、 最初に飲んだ時に嬉しかった。 喉が渇いている時なんかだと、 渋が強いぐらいの方が渇きを抑えてくれるのでかえって助かる。 今では、 私はドトールではコーヒーよりも、 この渋いアイスティーばかり頼んでいる。

その次が、 『白十字』という喫茶店のアイスティー。 私が飲んだのは、 横浜駅西口の川のそばの店だった。 ちょうど、高速道路の真下あたりである。

ところで、私は知らなかったのだが、 その店に一緒に入ったちょっと年上の人に、 昔は結構あちこちに 『白十字』 という喫茶店があったという話をきいた。 東京近辺の人なら、 『ルノワール』 という喫茶店は一度か二度は見たことがあるかもしれないが、 ちょうどそんな感じにチェーン店があったということだ。 サーチエンジンで調べると、 名曲喫茶店『白十字』というのは確かに何軒かあるが、 横浜のはコーヒーラウンジ『白十字』である。 系列のような、そうでないような気もする。 ちょっとこれ以上のことは私にはわからない。

その『白十字』だが、 店のたたずまいも若干 『ルノワール』なんかに似ている。 大きなソファが置いてあって、なんかサロンのようだ。 しかし、私はかえって落ち着けない。 以前に、知人と『ルノワール』に入った時に、 「ちょっとルノワールでは落ち着けない」というようなことを 言っていて、 私も同様の居づらさを感じたが、 それに似ている。 ソファのせいだろうか? いずれにしても、 そういうところから、 この店がやや古い系統の喫茶店に属するのは確かなように思える。

それはともかく、 そこでアイスティーを頼んだら、 なんと、アールグレイのアイスティーだった。 思わぬところで、期待以上のものが出てきたのである。

アールグレイの話は何度かしているが、 私が自分のうちで飲む場合には、 真夏でもホットで飲む。 しかし、アールグレイはアイスティーにも適した紅茶なのである。 ホットで飲んだ時に感じるきついベルガモット・オイルの香りと酸味も、 アイスティーにすると、 清涼感を演出するものとなる。 炭酸類は一切入っていないのに、 まるで炭酸飲料を飲んだ時のような爽やかな清涼感が残る。 しかも、 炭酸飲料が砂糖が大量に入っているために、 あとでかえって渇きを誘うのに対して、 冷やしたアールグレイは渋味が渇きをぴたりと止めてくれる。 だから、 アールグレイはアイスティー専用だと思っている人もいるくらいだ。

最近では、 アイスティーといえばセイロンティーの冷やしたものを出してくることが多いが、 アールグレイをアイスティーで出すなんて、 いかにも昔からある喫茶店らしい。 あの時ほど、外で飲んだ紅茶がおいしく、 そして、嬉しく感じられたことはなかった。

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