死の灰
Crossing out 2k


御堂岡物語
未魅 [ID:Cj3A7DQLZs.]   2000/03/30(木) 04:50
次の日の夜、黒揚羽の働いているバーに行ったら、予想通りというか、黒揚羽はいなくて。
「あ。御堂岡。黒揚羽だけどねえ、忙しくなる時間の前に来るっていってたよ」
 最近、たまに話すようになった、もうひとりのバーテン、安東清がそういいながら、セックスオンザビー
チをオレの前に置く。そのナマエが好きでよく、頼むのだけれど、オレはあいかわらず甘いカクテルが
好きで、よく、黒揚羽はオンナみたいだと笑う。
 ぼんやりとそれをすすりながら、黒揚羽が来るのを待つ。この店が一番混み始めるのは、午前2時くら
いから。店のドアがあくたんびに、そちらが気になって。かかっている音楽は、なんだろうこれ。なんか
60年代の音楽。オールディーズ。タイトルはよくわからない。そして、午前1時半。黒揚羽が、来た。オレ
の姿を見つけて、すこし困ったように笑う。その笑みが嫌なカンジ。カウンターに入ってきて、それか
ら、もう安東清のところ。ほんの少しだけ、オレのことを気にしてるのがわかる。
「調子、悪いの?」
 黒揚羽に囁く安東清の声が聞こえて、黒揚羽が困ったように笑う。
「悪いというか、風邪。バカがひく夏風邪です」
「熱は下がったの?」
「昨日よりは下がりました。今38度くらい?」
「帰った方がいいんじゃない?」
「ガキじゃあるまいし」
 答えながら髪をしばって、黒揚羽はひとつ伸びをする。そんなこと言って、オレとの約束は反故にしたく
せに。
「そりゃそうだけど、仕事より大事でしょ」
「あ〜、ま、大丈夫でしょう。あと3時間だし。あ、いらっしゃいませ」
 入ってきた客に挨拶をして、それからシェイカーを手にたまっていたらしきオーダーをこなしはじめる。
シェイカーを振るときの黒揚羽の顔は、結構好きだ。じっとオレが見つめていたのに気がついたのか、す
こしだけ、こちらを見て、わらう。別に、カウンターに座っていて、相手されないのは、結構いつものこと
で、でも、今日は、避けられてるみたいで、気になる。
 曲の雰囲気が変わった。去年大ヒットした洋画の主題歌。
「やあ」
 黒揚羽の声。
「昨日は、悪かったですね」
「いいよ、別に。まだ、その人、調子悪いの?」
「ええ。熱が下がらなくて」
 うしろでしばった髪が気になるのか、それを直しながら、黒揚羽が答えて。なんだか、胸の奥にモノが
つまっているみたいなカンジ。
「そっか。じゃあ、オレ帰るね ワラ」
「え―――ああ。ごめん」
「いいよ、仕方ないじゃん」
 席を立つ。ケツポケットから財布を出して、そしたら黒揚羽がひとこと。
「私のオゴリでいいですよ、御堂岡さん」
「いいよ、払う」
「御堂岡さん」
「払うってば」
 ああ、なんかよくわかんないけど、イライラする。
「じゃあね」
 なんだかコドモみたいだ。っていうか、こんなのコドモのすることだ。わかってるけどどうしようもない。
黒揚羽にお金をおしつけて、店を出る。すぐのところにあるエレベーターを待っているのもなんだかイライ
ラして、階段を駆け下りる。
「御堂岡さん!」
 背から呼ぶ声。黒揚羽の声。振り返るな、そう思って、でも肩をつかまれる。
「ごめんなさい」
「別に、あやまってもらわなくていいよ ワラ」
「本当にごめんなさい。この埋め合わせは絶対しますから」
「だから、別に―――」
 言葉をくちづけで塞がれる。それも、下から、触れるだけの、まだ、知らない種類のくちづけ。
「ごめん」
 やさしい、唇の、感触。うれしいんだか哀しいんだか悔しいんだか、よくわからない。

御堂岡物語 第二章「出会い」
みおみおみお   2000/04/03(月) 01:46
そういえば、自分は上月のことをあんまり知らない。どこに住んでると
か、なにをやってるとか。ただ、大学生で6つ年下で、あとはよく知ら
ない。浪人をしたとかいう話は聞かなかったから多分今年あたり就職活
動なのに、そんな話も聞かない。知ってるのは携帯電話の番号くらい
だ。でも、上月も同じくらい自分のことをしらない、とそう思ってなんとな
く、ため息をつく。

上月と出会ったのは病院だ。暑い夏の日、妹の見舞いの帰り。
喫煙所に座って、タバコを吸おうとしたら、火がなくて、隣でタバコを吸っ
ていた人に火を借りた。それが上月だった。
それから1ヶ月くらいたって、また喫煙所で上月に会った。
ふっと視線がかみ合って、軽く会釈する。
それからまた1ヶ月。もう一度、会った。
「よく…お会いしますね」
上月から話しかけられた。
「あ…はい ワラ」
「お見舞いかなにか?」
「ええ、妹の…ずっと入院してるんで…あなたは?」
「…兄の、見舞いに」
交わした会話はそれだけ。そしてまた1ヶ月後、上月に会った。
「おなか、空きませんか?」
また始めに話したのは上月だった。
「え?」
「この近所にうまい定食屋があるんです。どうです、一緒に」
そういえば、おなかが空いている、と立ち上がった上月を見上げると彼
はふんわりと笑った。
「僕は、上月っていいます。上月、澪。あなたは?」
「え…御堂岡、です ワラ」

自分をホモだとか思ったことはない。普通に女と恋愛してきたし、セック
スもしてきた。で、なんでこういうことになってるのか、と言われると困
る。どうしてこんなことやってるんだ、と言われてもそうなってしまったも
のは仕方がない。
自分は上月のことを好きなのか、と考えてみて、でもよくわからない。
初めての夜、もちろんうまくなんかいかなくて、でも、上月の苦しそうな
顔がとても綺麗で、無理矢理なかに押し入った。じんわりと目元に涙を
ためた上月が小さなかすれる声で自分を呼んで、それだけでぞくぞくと
背筋になにか寒気みたいなのが走って、あっけなくそれは終わった。
服を着ながら、後悔しないの、と上月に聞いたら上月はゆっくりと首を
振るから、どうしてこんなことになったのかなんて考える暇がなかった。

御堂岡物語 第3話 前編 「火遊び」 (1)
hehahehaheha   2000/04/08(土) 03:35
(あのさ、折角連載してやってんだから興を殺ぐようなこと
すんじゃねーよ精薄が。今回は長いので上から下に読め)

日曜日、えみみはひとりで街を歩く。
男がえみみにふりかえる。一人や二人ではない。誰もえみみを男性だと思わないからだ。ショーウィンドウに映る自分の姿を、えみみはちらりとのぞいた。ストレートボブ、アイライン、マスカラ。頬紅はなしで、唇は淡いピンク。フェイクファーのハーフコート、スカートは黒のタイトミニ。踵の太いロングブーツ。
十代の、少女。彼女がこっちを見つめ返している。
黒揚羽も安東清も厭已も知らない、えみみの秘密だった。少女になることは、一種のゲームにすぎない。外観で人を判断する人間たちへの挑戦、あるいは、自分自身に対する改革だろうか。
「ねえ。彼女。ひとり?」
今日もまた、30前後とおぼしき男がえみみに声をかけてきた、またいつものように、それを無視してやり過ごそうとする。が、男は執拗だった。えみみの声は高いので、声を出してもまず男性だとばれることはない。しなを作らずとも、えみみは女の子そのものだった。
「待ってくれ、君、高校生だろ? 映画見に行かない? お昼まだなら何でもおごるからさ、つき合ってくれよ」
「気が乗らない」
えみみは男に目をやって言った。
ぞくぞくする。まさか必死に男性をくどいているとは思いもよらないだろう。なんてバ
カなやつ!
「メンドいことは無しだ。俺の目、節穴じゃないゼ。君、男だろ?」
男は少し声を落として早口に言った。
えみみの歩調がゆるまる。
見破ったのは、彼が初めてだった。えみみはその男をまじまじと見た。
「いいだろ? さ、ここの店に入ろうよ ワラ」
男はえみみの肩をさっさと抱くと、角にあった喫茶店に入っていく。仕方ないな、と
えみみは思った。

御堂岡物語 第3話 前編 「火遊び」 (2)
hehahehaheha   2000/04/08(土) 03:33
「女装歴、長そうだね」
コーヒーを一口飲み、男は言った。
「長くもない。半年くらい」
「俺じゃなかったら見破れないと思うよ、完璧、美少女だもんな。声だって、女の子そのものだ。君ほどの子、初めて見るよ。その手の店とかは抜きにしてさ ワラ」
「どこでわかったわけ?」
「勘だね ワラ」
「…」
えみみは紅茶に手を伸ばした。目の前にいる青年は、えみみの好みに合致している。彼
に抱きすくめられ、服を剥ぎとられる様をふと想像し、えみみはびくんとする。そして、鈍痛のような快感が腰を走り抜けていく。
「俺、御堂岡っていうんだ。君は?」
「えみみ」
「えみみ? いかす名前だなあ。君にぴったりだよ ヒャハハハ」
「サンキュ」
「イブ、空いてるかい? 俺とつき合ってクレる?」
「イブは...」
えみみは店の隅のツリーに目をやった。地味だが、センスの良い飾りが瞬いている。昨日、安東清と会って、イブはふたりで過ごそうと約束したばかりだった。
「恋人、いるんだ」
御堂岡が不安そうな顔でえみみを見ていた。
「恋人っていうわけじゃないんだけど...。でも、うん、イブ、OKだよ」
「ラッキー。これで今年のイブはさみしくない。去年のイブは一人でバナクリサイト荒らしてたんでね ワラ 大学生って、いつでも暇なんだろ? 俺なんかいつも仕事きつくてさ、朝方に出かけることもしょっちゅうで...」
熱中して喋り始める御堂岡に、えみみは微笑んだ。舌の先で、かすかに唇をなぞる。無意識というわけでもなく、半分意識した癖である。口紅の味がして、えみみは心の中で苦笑した。

御堂岡物語 第3話 前編 「火遊び」 (3)
hehahehaheha   2000/04/08(土) 03:32
週末の夜、ふたりは肩をよせあい、街中の華麗な装飾のホテルに入っていった。誰が見ても、ごくあたりまえの若い男女に見えるだろう。
「メイク用品、持ってる?」
御堂岡はドアを閉めると、すぐに訊いた。えみみはミニリュックを掲げ、入ってる、と答える。
「なら、メイク落としてさ、男の子に戻ってみせてくれよ」
「オーケー」
えみみはバスルームに入り、メイクを落とし、付け髪を外し、裸になった。御堂岡に剥ぎ取られることを期待していたが、ブラの詰め物が床に落ちるのはどう考えても興ざめなのでやめた。
最後の一枚を床に落としたとき、扉が開いて御堂岡が入ってきた。彼もすでに、何も着ていない。御堂岡の下半身のそれは、既にそそりたっていた。
「どう? 俺のビックなフェザーは」
おどけてみせて、鏡の中のえみみを見つめ、背後から抱きしめてくる。
「えみみ。すごく素敵だ」
「せっかちだね…」
「君のせいさ」
御堂岡の吐息がえみみのうなじをくすぐる。全身が甘く痺れ、えみみはふう…と息をついた。男の硬い肌を腰に感じ、えみみは密かに笑んだ。しのび笑いは、じきに御堂岡の唇に吸い取られる。
「君…ただものじゃないね」
ベッドに横臥した御堂岡が言う。ふたりが密室にこもって、すでに2時間が経っていた。「どうして?」
「なんとなく。うまく言えないけど」
「カラダのことだろ?」
「それもあるけどさ、君ってたぶん…」
御堂岡はえみみの腰に手をまわした。
「俺も含めて、誰にも気を許さない。躰は自由にさせても、ハートは誰のものにもさせないっていうのかな ワラ」
「…」
「恐いよ。えみみを見ていると。どんどん、ひきこまれていく。君を独り占めしたくなる。でも、君は永遠に誰のものにもならない。だから、君を自分のものにするには、君を殺すしかない。殺さないかぎり、君は永遠に男たちを弄ぶんだ」
ここまで自分を見抜くのも、御堂岡が初めてだった。
えみみは微笑した。外観をたやすく見破り、さらに心の中まで見すかす。御堂岡こそただものじゃない。
しかし、それでも、えみみは御堂岡を恐いとは思わなかった。
「殺す…って?」
「かなり極端な話かもしれないね。実際のところ、俺にそんな根性はないよ。でも、想像はできる。俺は君に惚れる。惚れて、狂いそうになる。今日かぎりでおしまいにしようと思ったのに、セックスしたら、また会いたくなった。また逢う。もっと惚れて、君が他の男に抱かれる様を想像して、フェザー撃ちながら嫉妬で気が狂いそうになるんだ。君の、氷みたいなハートを熱くしてみたいって思うよ。たぶん、無理だろうけど ヒャハハハ」
「やってごらんよ」
喉の奥で低く笑い、えみみは御堂岡の頬に手を当てて接吻した。

御堂岡物語 第3話 (後編) 「ふたり」 (1)
hehahehaheha   2000/04/08(土) 03:30

クリスマスイブ。
えみみはとあるシティーホテルで御堂岡と落ち合った。
御堂岡はレストランやラウンジではクールをよそおっていたが、部屋にふたりきりになると、獣みたいに飛びついてきた。
「俺…いつかおまえを殺しちまうような気がする」
御堂岡はつかのまの静寂の中、つぶやいた。うっすらと汗をかいた躰が、えみみに寄り添ったままだ。しわひとつなかったシーツが、すでによれよれになり、毛布は床に落ちている。
えみみのうなじを御堂岡の吐息がよぎる。
「初めは確かにセックスが目的だったよ。でも、何度か会ううちに、今は…」
「今は…?」
「えみみの心が欲しい」
「そんなもの欲しがるなよ。安心してていい。僕は御堂岡に夢中なんだから...」
くすくす笑いながらえみみは躰を反転させて、御堂岡の方を向いた。肺活量のある胸は厚く、腰はあくまで小さく、男らしい体毛もえみみよりはるかに豊かだ。
「ずっと待ってた。今夜のこと。明日の今ごろまでずっとキミとこうしていられるんだ。外になんて出ない。何も着たくない。御堂岡がそばにいたら、それでいいんだ」
えみみは御堂岡を抱きしめ、囁いた。
「ほんとだナ? えみみ。俺以外の男と会ったり寝たりなんか、してないナ?」
「してないよ」
御堂岡が熱い唇を重ねあわせてくる。えみみの両腕が御堂岡の胴にからまり、脚は脚にまといつく。
「君だけだ…御堂岡…ほかには、いらない…」
「ああ…えみみ…おまえが好きだ…」
ふたりは、時を忘れて異空間をさまよう。
「どうして、おまえが俺を…って、恨んだことだってあるよ。おまえは悪魔そのものだってね。でも、えみみ。俺は後悔はしてない。こうして、おまえを感じていると、一番満足できるんだ。安心する。おまえは、俺の全部を知ってるから… ヒャハハハ」
御堂岡はえみみの髪をなでながら言う。
「そうだね、僕は御堂岡の全部を知ってる。ここも、ここも…」
「あっ…」
御堂岡は敏感に反応して、腰をくねらせた。

御堂岡物語 第3話 (後編) 「ふたり」 (2)
hehahehaheha   2000/04/08(土) 03:30
「いつだったんだ? えみみ。初めて、こんなことしたの…」
「十一の時。小学校の体育館の裏で、知らないオジサンに悪戯された。大きなあ
れが、僕を差し貫いた…」
「えみみ。もういい。そんな話、もう、聞きたくナイヨ」
えみみは、六歳の時に誘拐されたことはたとえ御堂岡にも言えないと思った。誘拐され、犯され、たった六歳で快感を覚えてしまったことなど…
「御堂岡は僕を軽蔑するだろうね。僕は子供のころから、こんなことばかりしてた。もう八歳でひとり遊びをやってたよ。十一でやられて、あとは坂をころがるだけ。ねえ、御堂岡はいくつのとき?ひとり遊び覚えたの…」
「中二んとき…」
なんて晩稲な御堂岡。えみみはいとおしさに、たまらず御堂岡を組み敷いていた。
「今夜は…逆になってもいいね…? 特別の夜だもの」
えみみは、黒揚羽に組み敷かれていた叫んでいた御堂岡の狂態を思い出していた。あいつめ…
「逆…?」
「そう。僕が御堂岡を征服するんだ」
「…えみみ、おまえ…」
えみみを見上げる御堂岡の目が、怯えている。しかし、えみみはかまわず、御堂岡の両足を思いきり振り上げさせた。
「や…ヤメロ…えみみ!」
「力を抜いて。大丈夫さ。僕を好きなんだろう? ね、御堂岡…」
「う…わ…あっ!」
えみみは、初めて御堂岡の体内深く、自分の熱い躰を沈めていった。
それは、意外なことに、彼にとっては生まれて初めての経験だった。
ふたりの躰が、密着する。弧擦れ合う。とてつもない激情がえみみを襲い、彼は嵐のように躰を暴走させた。信じられなかった。もう一方の快楽も、こんなに凄まじいものなのか。だったら、御堂岡はこんな思いをずっとしていたのだ。御堂岡だけじゃない、僕を抱いたすべての男たちが…
えみみは昇りつめながら、それでも、こんなことは今夜限りだと、そう思っていた。
僕には似合わない。僕はただ、御堂岡を完全に自分のものにしたかっただけだ…
「ああ…」
躰の下で、御堂岡が大きく呻くのがわかった。
いつのまにか、ふたりは同時に頂に達していた。お互いの躰の間には、御堂岡の熱いものが溶ろけている。ねっとりとした、若い、豊富な蜜。
もう、二度と離さない...御堂岡。