再会の夜〜朝





現在地:ゴーイング・メリー号  男部屋に設置した簡易ベッドの上

時間帯:早朝

人口密度:非常に低い  っつーか、船にたった2人

もう一人の奴:ギン

ギンの様子:素っ裸で幸せそうに寝てやがる

ギンがここにいる理由:





昨日、俺達の船はある島に着いた。

けっこう大きく平和な島で、大型商店街や名所もある。
ナミさんの話じゃ、レディのオアシス『スパ』もあるらしい。
っつーことでこの島には、3日間滞在することになった。


船守のくじ引きをして、俺は見事に当選してしまった。

ナミさんの素敵な笑顔と野郎どもの背中を見送って、
俺は街へ繰り出した。



当然、船守なんてする気はなかった。
ウソップでもとっ捕まえて、無理やりさせときゃあいい。
それに、大きな島には美女だってたくさんいるはず。

・・・こんなチャンス、俺が逃すわけねぇだろ。



街へ出たのには、ナンパの他にも理由があった。
食器と料理具の調達だ。

包丁なんかは問題ないんだが、ナベの大きさが足りない。

暗黒の胃袋を持つ船長がいるせいで、シチューなんかの時は、
結局大ナベ3つ分ほど作るハメになる。

それに、食事中でもどたばた暴れまわるもんだから、
食器が非常によく割れる。
これ以上減る前に、いっそ必要以上に買っておくべきだろう。


・・・だが、こういうモノは重いうえにかさばる。
いつもはゾロを(むりやり)連れて行って荷物持ちさせるんだが、
探すのも面倒だし、今日は船と街との間を往復し続けるハメになりそうだ。




ワイングラスを眺めているレディに声をかけようとした時、
後ろから名前を呼ばれたような気がした。


「サンジさ〜ん!!」と、確かに。
懐かしいような声が、足音が近づいてくるのを感じる。

振り向くとそこには、息を切らして笑っている、
ちっとも変わった様子のないギンがいた。


「ギン!?おい!ギンじゃねぇか!!」
「はぁ、やっぱり・・・、サンジさんだった・・・!」
「久しぶりだなぁ、おい!元気してるか?っつーか、なんで後ろ姿で俺って分かったんだ?」
「そんなの・・・、黒いスーツに金髪で、
 めちゃくちゃキメて歩いてる人なんて・・・、アンタぐらいですよ」


息を整えるギンの背中をさすってやりながら、少しばかりの話をする。
1人で重労働しなきゃならないと言うと、
ギンは、手伝います。と笑顔で言ってくれた。

正直困っていた俺は、ギンの好意に甘えることにした。



ギンのおかげで、買い物は1回で済んだ。
ただ、ギンには少しがんばってもらったから、お礼になんか食わしてやろうと思った。

簡単だし、クレープでいっか。


「ギン、ちょっと休んでけよ。1人じゃ暇だし、せっかく会えたんだし」
「えっ!いいんですか!?いやぁ、嬉しいなぁ〜」
「バーカ、なにニヤついてんだよ。とりあえず、
 どっかその辺にいてくれ。クレープ出来たら呼ぶから」
「あぁ、すまねぇな。サンジさん。
 でも・・・あの、料理するとこ・・・、見てていいかな・・・」
「ん?別に構わねぇけど」


その時、なんか、ギンの耳が赤かった気がした。



思い出話に花が咲き、気が付いたら日もすっかり落ちていた。

ついでだし、泊まってけよ。とギンに言うと、
困ったような、でもどっか嬉しそうな顔して、最終的にYESをだした。


少し豪華めに作った夕食の後も、
俺達の話は尽きなかった。




そして夜も更けた頃、ギンに野郎病人用の簡易ベッドを出してやり、
風呂でも入って適当に寝てろ。と言って、俺は明日の朝食の仕込みを始めた。


仕込みも終わって風呂から上がると、もうだいぶ遅い時間だった。

ヒマだし、寝るか。なんて思って部屋のドアを開けると、
白いパジャマのギンが、ベッドの上に正座していた。

その眼は、まっすぐ俺を見つめている。



月灯かりの中のギンは、いつもと少し違って。



「ギン・・・!・・・テメェ、何やってんだ・・・?」
「サンジさん・・・!お・・・俺・・・!」


ギンの思いつめたような声に何かを感じて、
顔のよく見えるところまで駆け寄る。
ギンの眼は俺を見つめたままだったが、

うっすらと涙を浮かべているようにも見えた。


「おいギン・・・!どうしたんだ・・・!?」
「お・・・俺・・・、もう・・・!もう我慢できねぇっ・・・!」



「・・・・・っ!?」


あっという間に、俺はベッドに押し倒されていた。



「サンジさん・・・!こんな事言うの・・・変かもしれませんけど・・・!」


ギンの眼差しは
――真剣で  どっか切なげで  そして


「お・・・俺のこと・・・っ!!俺のこと、抱いて下さいっ!!!」


そして  ―――――愛しい――




「・・・心配するな」

そう言って背中を叩き、今度は俺が上になる。



「そのつもりだ」



ギンの返事を待たずに、唇を重ねる。
抵抗なく絡まる舌は、愛しさを募らせ、惹きつけて放さない。

「・・・サンジさん・・・・・」

唇を離すと、ギンの眼から涙がこぼれた。

「言いそびれてたけど・・・、本当に・・・、本当に・・・本当に会いたかった・・・・・!」
「ギン・・・」


頭をなでてやり、ひたいに軽く口づける。
背中にまわされた手から、ギンの気持ちがひしひしと伝わってくる。

そっとパジャマのボタンを外し、胸に唇を落としてゆく。
小さく漏れる声を聞くたび、体に触れるたび、
強くなっていく気持ち。


どうして気付かなかったのだろう  こんなにも愛しいのに


「ん・・・はぁ・・・、サン・・・ジ・・・さん・・・」
「ギン・・・、俺、お前のこと・・・、泣かしちまうかもしんねぇ・・・」


「・・・あんたに・・・なら・・・、構わねぇ・・・・・」


ふっと優しい笑いを浮かべられた時、
俺はとどめをさされた。



「・・・やめろなんて言うなよ」



大切なものを  見つけたから

離れてしまうの  わかってるから

だからお願い  今夜だけでも

あなたのことだけ  抱かせておくれ―――――





あれから何回交わったんだろう。
もしかしたら1回だけか?・・・いや、わからねぇ。

いつのまにか寝てて、気が付いたら朝だ。



さぁ、朝メシの仕度でもしてくるか。
もう少ししたら、コイツも起きる。

まぁ、起きたところで、立てるかどうかは知らねぇけど。


ズボンとシャツを身にまとい、上着を持って部屋を出る。
振り返ると、ギンはまだ寝ている。



「昨日言いそびれちまったけどな・・・ギン、
 ・・・・・好きだぜ」





現在地:ゴーイング・メリー号  男部屋のドアの前

時間帯:早朝

人口密度:非常に低い  っつーか、船にたった2人

もう一人の奴:ギン

ギンの様子:相変わらず、素っ裸で幸せそうに寝てやがる



ギンがここにいる理由:もうちょい、一緒にいたいから―――






御帰リナサイ御主人様 私ノ愛シイ動カヌ人形