ラプサンスーション

紅茶店で、女の子が二人ばかり、紅茶を選んでいる。 この店ではリーフを瓶にいれて店頭に並べ、量り売りしている。 そのうち、一人の女の子が、ラプサンスーションの瓶をとる。 私には次の反応が予想できる。 笑いをこらえて、彼女たちを見ないふりをして観察していた。 さて、その子は、蓋をとり、蓋の匂いを嗅ぐ。 予想通り、 「うっ」と、 声を出して顔をしかめた。


横浜の元町に SANDGLASS という紅茶専門店がある。 私がはじめて本格的な紅茶を飲んだのは、その店で、 そして、 それ以来私は紅茶に病みつきになった。

その時に飲んだのが ラプサンスーション (Lapsang Souchong) であった。

ところで、 私は 『ラプサンスーション』 と呼んでいるが、 どうも、普通には 『ラプサンスーチョン』 と呼ぶものらしい。 漢字で書くと、 『正山小種』 となる。 だから、 これは中国茶といった方がいいのかもしれない。

さて、 私は、これを飲むまでは、紅茶なんて同じような味のもので、 余程コーヒーの方が味わいのあるものと思っていた。 だが、 ラプサンスーションを飲んだ時に、 紅茶にもこんな強い味の、香り高いものがあるのかと感動し、 店をでる際に、SANDGLASS で 100g 入りのラプサンスーションを買って帰った。 以来、私は紅茶党になったのである。 だから、 ラプサンスーションは、 私にとってはひときわ思い入れのある紅茶といえる。

もしも、紅茶なんて同じような味ばかり、と思っているのなら、 一度試してみたらいいかもしれない。 私のように「こんな味の紅茶があるのか」と感動する人もいるだろうし、 「こんなにまずい紅茶があるのか」と顔をしかめる人もいるだろう。 いずれにしても、 紅茶は個性のあるものと、 認識をあらたにすることだけは間違いない。

しかし、ラプサンスーションを友だちにいきなり飲ませるのは、 やめた方がいいかもしれない。 場合によっては友だちを失う可能性がある。 かなりの紅茶好きの人間ですら、 最初は飲めないという人がいるくらいである。 例えば、 みかんさん の場合、 テイスティングルームラプサン・スーチョンの項 をみると、 紅茶をおぼえたての頃とはいえ、 参ったようなことが文章から読み取れる。 うちでもそうで、 私がラプサンスーションをいれると、 大顰蹙をかうのが普通である。

確かに独特な香りと味はする。 しかし、 別に、そんなに飲み物として不思議な味でもない。 にもかかわらず、 ラプサンスーションを敬遠する人は多い。 その一方で、私もそうだが、 これに病みつきになる人もいる。 不思議といえば不思議といえる。

さて、 ラプサンスーションに病みつきになったとする。 しかし、病みつきになったあとにも苦労は続く。

ラプサンスーションを入手するのは難しい。 売れ筋でないために、 品揃えのいいところに行かないと手に入らない。 次に、これをいざ飲もうとした場合に、「一人の時に飲め」などと、 迫害されることも多い。 みかんさんの ラプサン・スーチョンの項 に、「隠れファンが多い」と書いてあるのは、 人前で飲むと何を言われるかわからないということと、 「飲むなら一人の時に飲め」と言われることが多いからだろう。

味と香りだが、上のみかんさんのページに書いてあるので、 私が説明するのは控える。 もしも、 あの香りがちょっとというのなら、 カップに注いでもすぐに飲まずに香りを飛ばしてしまった方がいいかもしれない。 ぬるくなると若干香りが薄くなるようだ。 これなら、熱いうちにはちょっと、という人も飲めるかもしれない。 それに、ぬるくなると紅茶特有の絶妙な甘みが出てくる。

紅茶好きに 100 の質問 の中で、 ミルクティーにして飲むかどうかの問をいれておいたが、 ヨーロッパではミルクティーにして飲むこともあるらしい。 苦手な人にとっては、 もはやゲテモノの領域に入っているのかもしれないが、 言われてみれば、 意外にあうかな? という気もしないでもない。

さて、ラプサンスーションだが、 レピシエ や伊藤園ティーガーデンなどに行けば量り売りしている。 フォートナム・アンド・メーソン からも出ている。 気のせいかもしれないが、 日本のブレンダのは、やや軽め、 フォートナム・アンド・メーソンのはかなり強いという感じがする。

そんなことを考えていたら、最初に飲んだ SANDGLASS で売っている ラプサンスーションを飲みたくなって来た。 あれを飲まなければ、紅茶好きにはならなかったと思うと、 恩人のように思える。 ちょっと遠いが、 こんど元町に行ってみようかな…。

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