PDA のスケジューラ

9 月の終わり頃に PDA というものを買った。 PDA というのは、『パーソナル・データなんとか』の略で、 垢抜けない言葉でいうと、一種の電子手帳である。 携帯電話におまけでついているような、 カレンダーなんかを連想するのがてっとり早い。

一言断って置いた方がよいかも知れない。 私は自分の予定はすべて頭に入っている。 つまり、それだけ予定が少ない。 従って、 スケジューラや ToDo などを使う必要なんかない。 そして、最初からそれらを使うつもりも無かった。 雑文の下書きのために PDA を買ったのである。 しかし、雑文と PDA の話はまた別の機会にしよう。

さて、 PDA といっても色々あるが、 世界的にポピュラーなのは、やはり Palm OS を搭載したものだろう。 Palm というのは PDA の代名詞のようになっている。 その Palm には標準で予定表と ToDo リストがついている。 しかし、 繰り返しになるけれど、 私はそんなに予定の多い人間ではないので、 最初はそれらの機能を使うつもりはなかった。

そもそも、 システム手帳が流行った時ですら、 私はそんなものに縁がなかったし、 ごく普通の手帳すら持ち歩いていなかった。 しかし、システム手帳というものを持ってみたいという気持はあった。 仕事であれ、 遊びであれ、 予定がびっしりと詰まった生活。 私にいわせればそれは、華々しい生活だった。 沢山の友人の電話番号がびっしりと書き込まれたアドレス帳は、 私には社交的な人間の証明のように見えた。 だが、実際には予定は全部頭に入る程度しかなかったし、 アドレス帳は寒々としていた。 今でも、それは変わらない。 例えば、私の携帯電話の電話帳には 10 件程度のデータしか入っていない。 そんな、システム手帳がなくても不便はしないという、わびしい私には、 システム手帳を持つということが、 活躍している人間のステータスのように思えた。

もちろんシステム手帳に限らない。 普通の手帳だって、私みたいな人間には無縁だ。 とはいうものの、 手帳は二十代の終わり頃から使いはじめる様になった。 予定は少なくても、 ちょっとしたことを色々書き込んでいけば、 記録として残る。 つまり、日記帳の代わりに使っていたのである。

そして、そろそろ四十になろうとした矢先に、 システム手帳を飛び越して PDA を使うようになった。 もちろん、今でも、私には予定はなく、自分をとりまく世間も狭い。 しかし、買ってしまった以上、 もったいないので、予定表も ToDo も使っている。 使ってみれば、 私のような人間にとっても、 Palm のスケジューラの機能は便利に思われた。

しかし、不満がないわけではない。 私が持っているのは、 SONY CLIE-700C で、 この機種のスケジューラは 1904 年から 2031 年までの範囲しか扱えない (もっともこの制限が CLIE のみのものかどうかは分からない)。

もちろん、 普通に使う分にはこれでおつりがくるほどだが、 メモリの許す限り過去も未来も無制限に扱えればもっと楽しいだろうと、 思うことが多い。 例えば、 今のままでは、 今年二十歳の人が 自分の定年の日を予定表に入力することは出来ないし、 2038 年 4 月 15 日に 「13 時に年金のことで市役所へ」 等といった予定を今から入れておくことも出来ない。 当然、カレンダーの制限は ToDo リストにも影響する。 2035 年 6 月 13 日までに一戸建ての家を買う、とか、 2042 年 2 月 25 日までにローン完済なんていうことも入れられない。

それとは反対に、 過去も紀元前から扱えれば、 色々楽しいことが出来るはずだ。 歴史の年号を覚えるために使うということも考えられるが、 まったく何の意味もなく、 手のひらの上の PDA にロマノフ王朝の栄枯盛衰や、 ブルボン王朝の栄華が記録されているかと思うと何となく楽しい。

こんな使い方は暇人ならではの思い付きだ。 普通の使い方を考えてみよう。 ごく普通にスケジューラを使うとしたら、 筆頭にあがるのは、日記代わりに使うことだろう。

予定表に、その時々の雑感を書いておけばれっきとした日記帳になる。 こういう使い方をしている人は多いはずだ。 そこまでいかなくても、 出張のときに気に入ったホテルなどの電話番号をメモしておくと、 あとで同じ場所に出かけなければならないときに役に立つ。 こんな使い方なら、手帳を持っているすべての人がしているだろう。 これなんかは、広い意味での日記ともいえる。

この程度なら、紙の手帳でもできないことはないが、 PDA ならではの便利さもある。 手帳だと狭いところに書き込むのに苦労するが、 PDA だとメモリの制限はあるものの手書き以上の分量の情報が書き込める。 Palm のスケジューラのいいところは、 各種の情報にコメントがつけられる点で、 コメントはフリーフォーマットだから、結構色々書き込める。 私のように細かい字を書くのが苦手な人間には、 罫線で仕切られた手帳に書き込むよりも神経を使わないで済むのでありがたい。

一方の ToDo リストの方は、夢を書いておくのがいいかも知れない。 ToDo リストを開けるとたくさんの項目が並んでいるというのは、 やり残した宿題が溜ったようで嫌だという人も多いが、 実現できなくても、 夢がたくさんあることは、 文字通り、夢があると言えるだろう。 さて、この ToDo リストの使い方だが、 私の思い付きではなくて、 Mayo Aihara さんのコラム に書いてあることを白状しておこう。 トップページは http://www.ceres.dti.ne.jp/~mayo/index.html で PDA やモバイルコンピューティングのコラムも多い。

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